忍者ブログ
2024-111 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 prev 10
104  103  100  93  86  85  83  65  64  63  62 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

殿下とフリングス将軍(捏造)

----------

「殿下!」
 青い軍服の裾を翻して走り寄る美丈夫の姿を見て取ると、ピオニーは僅かばかり苦笑を浮かべた。
「フリングス将軍。その様子では、聞いたな」
「では、グランコクマを……、離れるという話は」
「本当だ」
 ピオニーは苦笑から苦味だけを綺麗に消す。幼い顔立ちには不釣り合いな、どこか達観した透明な微笑。いたましい、とフリングスは思う。
「将軍には、良くして貰ったが。何も返してやれないのは残念だ」
 何を仰います、と。口をついて出そうになった言葉を飲み込み、白銀の髪の将校は話題を変えた。
「殿下。私には、殿下にお仕えするに丁度よい年回りの、息子がおります」
「息子? 娘ではなく?」
「ええ」
「将軍の子ならさぞ美形だろうな」
「姿形の美醜はともかく、私にとっては可愛い息子です」
 これは、殿下の立場を思えば、些か失言だったか。一瞬、そのような考えが脳裡をよぎったが、その思考を表に出すことなくフリングスは言を継いだ。
「その息子も、どうやら軍人を目指すようなのですが。殿下には、息子が主と仰ぐに相応しい方であって欲しいと……私が殿下に望むことはそれだけです。何も返していただく必要はありません」
「それだけ、ねえ。難しいことを、さらっと言うなあ」
「難しいと、そう感じていただける、その心根が嬉しいのです」
 私はこれで人の選り好みが激しいんですよとフリングスは笑う。
「では、なるべく将軍に愛想を尽かされないようにしよう」
 そう笑みを返し、ピオニーは両手を伸ばした。意図を察したフリングスが身を屈めると、稚い手はその頬をそっと挟んだ。
「武運を。幾つの戦場を経ても、将軍が無事、愛息の元へと戻れるように」
 別れの言葉の代わりにそう言祝いで離れた手を、フリングスはやんわりと引き留める。抱える重荷に対して、あまりに小さな子供の手。今の段階で、今の自分が、この手の持ち主にして差し上げられることは皆無に等しい。それが歯痒く、口惜しい。フリングスは内心の葛藤を押し殺す代わりに、その手を恭しく押し戴いた。
「……殿下」
 そして、辛うじてピオニーの耳に届く声で囁く。
「御帰還、お待ち申し上げております」

----------

捏造アスランのおとうさん。親馬鹿でウパラ贔屓。
PR
NAME
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS
TRACKBACK URL 
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
CONTACT
簡易連絡用拍手。拍手のみも有り難く頂戴します。お返事はカテゴリの「拍手などのお返事」でさせていただきます。
"" WROTE ALL ARTICLES.
PRODUCED BY SHINOBI.JP @ SAMURAI FACTORY INC.
忍者ブログ [PR]