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■ジェイドとピオニー
※微妙に所謂女性向けな気もするので御注意
※微妙に所謂女性向けな気もするので御注意
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「結局、サフィールも無事だったんだろ。ならその場でふんじばって持ってくりゃ良かったのに」
惑星譜術の件、レプリカネビリムの件。詳かに語った長く重い事の顛末を、この人がそう締め括ったのは、蒸留酒を二人で一本、空けた頃のことだった。極めて自然な軽い口調。それが意図的に作られたものであるというのは、酔いの回った頭でも判断はついた。
「煩いお荷物を抱えての移動なんて、まっぴらごめんですv ……どうせすぐ私を追ってきますよ」
気遣いに甘えてぞんざいに返せば、相も変わらず情れないことだ、サフィールの奴も可哀想にと肩を竦めた。この人は普段から、幼馴染みの名を、大切なもののように口にする。しかしその慈しむ声音が、今夜に限って何故か妙に癇に障った。
「私の方を向いている間は、あれはあなたの方を見ない」
我ながら馬鹿げた科白だ、と思う。
しかし、軽く瞠られた目に。溜飲が下がったことも事実。
「もしも、私とあなたが出会っていなかったら。或いは私たちの出会う順番が……、あの洟垂れが私より先に、あなたに出会っていたなら。あなたの懐刀と呼ばれていたのは、ネイス大佐だったのかもしれないと、ね。そう思うことがあります」
酒杯を重ねた勢いのまま。そんな埒もない言葉を吐き出す。
「あれは。反発の形を取りながら、ずっと……私だけでなく、あなたにも惹かれ続けていた。それに気付かぬあなたではないでしょう」
酷いのはどちらでしょうね、と。挑発と誘惑、半々で睨め付ければ、私のことなどお構いなしに「もしも……なあ」などと何事かを思案するような半眼。そして杯の中身をゆっくり呑み干すと、口の端を吊り上げた。
「もしも、俺がお前に……お前たちに出会えていなかったら。目的のない力を倦んで、俺は、この国を滅ぼしていたかもしれない」
金褐色の指先が、杯の縁を弾く。破壊音にも似た高い響き。
音素灯の光を吸い込むような、底知れぬ瞳の色。酒精の舞を思わせる、ゆうるりとした言葉の連なりは冗談とも本気ともつかず、故に正気と狂気の境がひどく曖昧。その、仄暗い領域を堪らなく心地良いと感じるのは……酩酊の所為、ということにしてもいいだろうか。
「権力で人を一人残らず滅ぼすことは無理かもしれんが、マルクトとキムラスカ、ダアトを巻き込んで国家の形を残さず磨り潰す程度のことはしたかもな?」
大言壮語ではなく、この人にはそれができる。私の知識や譜術が劫火の力なら、この人の力は劫火を使いこなす意志の力。一度こうと決めたなら、誰よりも効率的に徹底的に、この世界を壊すだろう。
けれど、その力を持つこの人は。私と同様、いや、それ以上に。負の感情を知り、負の遺産を負い。しかしその甘く安逸な闇の泥に沈むことなく、光さす茨の道を歩み続ける。だからこそ、惹かれてやまないのだが……、それにしても。出会えた奇蹟と世界の存亡を天秤に掛けて語るとは、迂遠にも程がありはしないか。
「率直に愛していると仰って下さって構わないんですよ?」
物騒な駆け引きに溜息を零せば、皇帝は勝者の余裕で片目を瞑る。
「もしも、の、話だろ」
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酔っ払いの戯言はタチ悪いカンジ。
「結局、サフィールも無事だったんだろ。ならその場でふんじばって持ってくりゃ良かったのに」
惑星譜術の件、レプリカネビリムの件。詳かに語った長く重い事の顛末を、この人がそう締め括ったのは、蒸留酒を二人で一本、空けた頃のことだった。極めて自然な軽い口調。それが意図的に作られたものであるというのは、酔いの回った頭でも判断はついた。
「煩いお荷物を抱えての移動なんて、まっぴらごめんですv ……どうせすぐ私を追ってきますよ」
気遣いに甘えてぞんざいに返せば、相も変わらず情れないことだ、サフィールの奴も可哀想にと肩を竦めた。この人は普段から、幼馴染みの名を、大切なもののように口にする。しかしその慈しむ声音が、今夜に限って何故か妙に癇に障った。
「私の方を向いている間は、あれはあなたの方を見ない」
我ながら馬鹿げた科白だ、と思う。
しかし、軽く瞠られた目に。溜飲が下がったことも事実。
「もしも、私とあなたが出会っていなかったら。或いは私たちの出会う順番が……、あの洟垂れが私より先に、あなたに出会っていたなら。あなたの懐刀と呼ばれていたのは、ネイス大佐だったのかもしれないと、ね。そう思うことがあります」
酒杯を重ねた勢いのまま。そんな埒もない言葉を吐き出す。
「あれは。反発の形を取りながら、ずっと……私だけでなく、あなたにも惹かれ続けていた。それに気付かぬあなたではないでしょう」
酷いのはどちらでしょうね、と。挑発と誘惑、半々で睨め付ければ、私のことなどお構いなしに「もしも……なあ」などと何事かを思案するような半眼。そして杯の中身をゆっくり呑み干すと、口の端を吊り上げた。
「もしも、俺がお前に……お前たちに出会えていなかったら。目的のない力を倦んで、俺は、この国を滅ぼしていたかもしれない」
金褐色の指先が、杯の縁を弾く。破壊音にも似た高い響き。
音素灯の光を吸い込むような、底知れぬ瞳の色。酒精の舞を思わせる、ゆうるりとした言葉の連なりは冗談とも本気ともつかず、故に正気と狂気の境がひどく曖昧。その、仄暗い領域を堪らなく心地良いと感じるのは……酩酊の所為、ということにしてもいいだろうか。
「権力で人を一人残らず滅ぼすことは無理かもしれんが、マルクトとキムラスカ、ダアトを巻き込んで国家の形を残さず磨り潰す程度のことはしたかもな?」
大言壮語ではなく、この人にはそれができる。私の知識や譜術が劫火の力なら、この人の力は劫火を使いこなす意志の力。一度こうと決めたなら、誰よりも効率的に徹底的に、この世界を壊すだろう。
けれど、その力を持つこの人は。私と同様、いや、それ以上に。負の感情を知り、負の遺産を負い。しかしその甘く安逸な闇の泥に沈むことなく、光さす茨の道を歩み続ける。だからこそ、惹かれてやまないのだが……、それにしても。出会えた奇蹟と世界の存亡を天秤に掛けて語るとは、迂遠にも程がありはしないか。
「率直に愛していると仰って下さって構わないんですよ?」
物騒な駆け引きに溜息を零せば、皇帝は勝者の余裕で片目を瞑る。
「もしも、の、話だろ」
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酔っ払いの戯言はタチ悪いカンジ。
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