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ガイとピオニー

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 皇帝の私室に呼ばれるなんざ、身に余る光栄なんだろうな。
 …………………。
 …………………。
 …………普通は。

 ブウサギにブラシをかけながら、俺と同じように床に座り込んで、やはりこれまた同じようにブラシを扱う皇帝陛下の様子を窺う。瞬時に個体識別できる境地には至ってないものの、陛下が掌中の珠の如く抱え込んでいるのは、多分『ジェイド』だ。なんとなくげんなりな気分を味わいながら、己の腕の中の『ルーク』を撫でる。毛並みの色が少し違うから、こいつだけは遠目にも間違えない。それにしても。
「……陛下。何故、『ルーク』なんですか?」
 そう、これは。随分いきなりなネーミングだと思うのだ。
「あ? ああ。そいつ、ルークっぽいだろ」
 なー可愛いジェイドーとブラッシングの手を止めず、ブウサギに同意を求める皇帝の真意は、微妙に計り難い。
「甘えたいけど甘え方が判らなくて、近寄りたいんだけど戸惑うような様子がさ」
 なんというか、身も蓋もない。人間の方のルークは、陛下のこういうところも苦手なんだろうなあと思う。
「それはそうとガイラルディア。構うときは、ちゃんと名前呼んでやれよ。特にルークは此処に来たばかりだ。環境が変わって、不安だろうからな」
 取り敢えず苦笑してその場を濁そうとすると、にこやかな笑顔で呼ばないのかと無言の圧力。仕方がないと腹を括る。
「ルーク……」
 そう呼べば、見上げてくるつぶらな瞳。
 うわ、これはヤバい。絆されそうだ。
「独り言よりゃ、甲斐もあるだろ」
 ぽつりと。それこそ独り言のような呟きに、心臓が跳ねる。
 ひょっとして、『ルーク』は。他でもない、俺のため、か?
 『此処に来たばかり』で『環境が変わって不安』というのも、おそらくは俺のこと、も、含むのだろう。
 そうだ陛下はいつだって。傍若無人なようでいて、さらりと誰かの為に動く。

 こいつは、身に余る光栄、なんてものじゃない。
 畜生、鼓動が早い。本当にこのまま、絆されちまいそうだ。

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世話を焼かれることに、なんとなく慣れていない世話焼きさん。
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