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CAST:パーティメンバー・ピオニー
お茶をしながら、大佐と陛下の思い出話 の巻

幼馴染みというものは

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「そういえば、陛下と大佐は幼馴染み、でしたわね?」
 そう口火を切たのは、ナタリアだった。

 グランコクマ宮殿、皇帝陛下の私的なサロンで軽くお茶をしていたのは、ルークとミュウ・ガイ・ティア・アニスに、ここの主であるピオニー、その懐刀であり今は給仕を務めるジェイド、それから発言主のナタリア。日頃、食事時に茶ァ淹れるのは、俺かティア、或いはアニスなんだが、ここで飲む茶に限ってはジェイドの旦那なんだよなあ、面白いことに。そんなことをつらつら考えていたガイは、うっかり茶を噴き出しかけた。
「違う、とは言わんが。唐突だな、姫」
「礼を欠いたのなら申し訳ありません。ただ最近、幼馴染みとは何なのだろうと、どうあるべき存在なのかと。そのようなことを考えたものですから」
 普段は強い意志を示す瞳を伏せたナタリア、心配と不安が半々のルーク、そのルークをひたむきに見つめるミュウ、噎せた振りで場を繋ごうとするガイ、ポーカーフェィスで状況を見守るティア、掌を温めるようにティーカップを持ち口許の表情を隠すアニス。その微妙な雰囲気を一瞬で読み取ったピオニーは、素知らぬ顔の幼馴染みにちらりと視線を送ると、不自然ではない程度に軽やかな口調を作った。
「いやなに、礼儀がどうこうというわけではない。こいつとはまあ腐れ縁だから、幼馴染みとかってな可愛い響きがこそばゆくてな」
「ブウサギに幼馴染みの名前を片っ端から付けた方のお言葉とは思えませんね」
「うるさい。……とまあ、こんな可愛くない奴のことだ。あまり姫の参考にはならないと思うが」
「あ、でも。幼馴染みってことは、子供の頃の大佐を御存知、ってことですよね」
 はい! と挙手したアニスに、ピオニーは鷹揚な笑みを向けた。
「興味があるかな?」
「えっと、怖いもの見たさ?」
「アニース。月夜ばかりでないというのは、私も大賛成ですv」
「えへ☆」
 頼もしいムードメイカーに頬を緩めつつ幼馴染みを見遣ると、赤い瞳が僅かに眇められた。お任せしますというその色を、読み違えるピオニーではない。
「さてさて、怖いもの見たさというが。俺は立場が、この眼鏡は頭の出来が、特殊といえば特殊だったが。普通に遊ぶ分には、そこらの子供とあんまり変わらなかったと思うぞ」
「遊ぶ? ジェイドが?」
 それは遊びという名の人体実験とかそんなオチではないのかと、当事者二人以外の全員が思ったが、月のない夜を思い、皆、口にはしなかった。
「ケテルブルグで、雪合戦をする子供たちを見なかったか?」
「え、ってことは陛下はともかくジェイドも雪合戦……を」
「やりましたよ」
「大佐、想像できませんよう。てか、今の大佐の方がまだしもやりそうですよね?」
 アニスは人差し指を顎に添えて、首を傾げた。
「そうかもしれませんね。ま、確かに子供らしい遊びをするタイプの子供ではなかったと思いますけれど。なにしろ陛下に引っ張り回されましたからねえ」
「へえ、それで嫌々?」
「いいえ」
 悠々と茶器を扱いながら、ジェイドはにっこり微笑んだ。
「まあ最初は渋々でしたけどね、子供騙しな雪遊びもなかなか楽しいものだと思いましたよ」
「何だか意外ですわね」
「ジェイドさんも雪を丸めて投げたですの?」
「ええ、中に石を詰めてv」
「……うっわ」
 揃いも揃って一斉に引くなか、ピオニーだけは愉快そうにカップを掲げた。
「あーあーあったあったそんなこと。その『あたり』雪玉、悉くサフィールが喰らってたっけなあ」
(それって……)
(もちろん、狙ったんだよね……大佐)
「陛下、それは止めた方が良ろしかったのでは……?」
 極めて素敵な笑顔の大佐に何を言っても無駄だと、ティアはピオニーに矛先を向けた。
「まあ度を越すようなときはな。だがそれは荒っぽい遊びをする男の子供なら、割と皆、一度は通る道だ。子供ってのは、こういう経験からも学ぶものだろ。頭じゃ判ってるつもりでも、実際痛い目に遭ってみないと実感できないこともあるしな」
「……スタンダードな子供の遊びというなら、鬼ごっこや隠れんぼもしましたね。陛下は当時から逃げ足が早く、雲隠れも大変お上手でした」
 ピオニーの手から空のカップを受け取ったジェイドは、それに二杯目の紅茶を注ぎながら言葉に棘のような含みを持たせたが、嫌味の相手は気にも留めない。
「ジェイドが鬼のときは大変だったぞー」
「やっぱ容赦なかったりえげつなかったり?」
「そりゃも、遠慮なく言葉通りの鬼だからなあ。ジェイドが見つけてくれるまでは帰らないと泣きじゃくるサフィールをネフリーとふたりがかりで宥め賺して、結局泣き疲れて眠ったサフィールを背負って帰ったりな」
 どこからどう突っ込んだらいいのか判らず、曖昧に微笑んだりあからさまに困惑したりする一同を後目に、ジェイドは妙に機嫌の良い様子で、ピオニーの前にカップを置いた。
「それはそれは初耳ですねえ。ネフリーからも聞いてませんよ」
「ネフリーは日が暮れる前に帰したからな。俺らの手前、引っ込みがつかなくなっちまったのかとも思ったから、ネフリーを送りがてら、一旦傍から離れてみたんだが。念の為戻ってみたら、まだ泣いていてなぁ。星の綺麗な夜だったぞ」
「ほう、そぉんなことが」
 一度きちんと問い質さなければなりませんね、とかなんとかジェイドの呟きが聞こえたような気がしたが、そこはそれ、皆が皆、聞かなかったことにする。
「あとは雪像を作ったりな」
「雪だるまとか雪ねこにんとか雪ぶうさぎですね。微笑ましい思い出です」
「雪ねこにん……雪ぶうさぎ……。それはとても可愛いでしょうね……」
「ん、ああ。特にブウサギは全体の形が単純だからな。耳も常緑樹の葉とかで代用すれば、簡単に作れるぞ」
 ピオニーは夢見るような瞳のティアに、今度作ってみるといいと微笑み、でも、と続ける。
「こいつが作ったのは雪像じゃなくて落とし穴。しかも穴に填ったら連鎖して上から積もった雪が落ちてくるような、キョーアクなやつ」
「引っ掛かって下さらなかった方が、よく仰いますね」
「実を言うと、引っ掛かるのもちょっと楽しそうだとは思った。でもなあ、そんなときはネフリーも一緒のことが多かったからな。巻き込むわけにも、な」
「いずれにせよ引っ掛かる馬鹿は一人だったので、問題はありません」
 清々しいのか禍々しいのかよく判らない微笑みに、各々視線を泳がせた。
「え、ええと。他には、どんなことを?」
「そうですね。なにぶん毎日のように雪が降る土地でしたから、部屋の中で絵を描いたり」
「そいうやサフィールが白いクレヨンを握りしめて途方に暮れていた所を見たが、あれは何だったんだ?」
「簡単なおやつを作ってみたり」
「カスタードとマスタードをすり替えるなら、洒落で済ませろって何度も言ったんだがなあ。サフィールの奴がまた懲りないし」
「……私ばかり悪者っぽいというのは納得できませんね。先生の机に虫の詰め合わせセットを仕込んだのは陛下でしょう」
「あれは、プレゼントだぞ。喜んでくれたじゃないか、先生。これは何々の幼虫、これはかぶれるから今度からは直接手で触れたりしないように、とか、うきうき解説してくれたろ」
「プレゼント、ねえ。驚かせる気満々だったのは何処の誰でしょうねぇ」
「プレゼントはビックリさせてナンボだろ。それよか俺はその後何日か、サフィールが包帯撒いて痒い痒い言ってたことの方が気になるんだがな」
「そんなこともありましたか? 陛下が仰るならその通りなのでしょうが、生憎私の記憶にはございませんねえ」
 テンポのいい応酬とその内容に絶句した面々は、そっと額を付き合わせた。
(なんていうかさ、仲良さそう……)
(……に、聞こえるけれど。でも)
(やっぱおかしいよな、変だよな? ジェイドが力の限り酷ぇのも、ディストの尋常じゃない性懲りなさも、そのふたりの両方と当然のように友達付き合いしてる陛下も、ひとりだけ妙にフツーっぽいネフリーさんも)
(御主人様、御主人様。かすたーどとますたーどはどう違いますですの?)
(カスタードは辛くて、マスタードは甘いのですわ)
(……逆だ、ナタリア)
 紅茶で唇を湿らせながら、ゴニョゴニョと微妙に聞こえる内緒話をする子供たちを面白そうに眺めていたピオニーは、頃合いを見計らい、ぽつりと言葉を落とした。
「でもまあ。楽しかったよ、俺は」
 懐かしむような、愛しげな声に、ナタリアは思わず顔を上げた。
「幼馴染みに限らず。人間関係なんて十人十色、何が正しいというわけでもなかろうさ、姫。たとえ他者からどう見えようが……ネフリーやサフィールはともかく、こいつの前で言うのも業腹だが、こいつらに出会えて良かったと、俺は思うぞ。
 どうあるべきかという姫の使命感は尊いが、幼馴染み相手のことだろう。義務に囚われて混乱するよりは、姫がどうしたいかに焦点をあてた方が、筋も通るのではないかな」
 参考になるかどうかと念を押しつつも、ナタリアの問いに方向を示すあたり、陛下は律儀ねとティアは微笑み。ルークはどうあるべきかよりどうしたいのか、か……と考えるように呟き。馬鹿話はここに落とし込むための前フリかあ、大佐はともかく陛下も意外と芸が細かいよねとアニスは内心舌を巻き。思わずジェイドを振り仰いだガイは、眼鏡を直す仕草で隠れて見えない表情に肩を竦めた。
「それにしても、改めてこう並べてみると。本当にお前、昔っからサフィールへのあたりがキツイよな」
「ああ我が君。それには理由があるのです」
 片手は天に差し伸べ、片手はそっと胸元に。オーバーアクションに胡散臭い情感を込めて、ジェイドは囁く。
「私がこれほどお慕い申し上げているというのに、陛下はいつもあの洟垂ればかり気にかけて。身を焦がす嫉妬のあまり、つい右手がわきわきと」
「ははは、えっらいキモイぞ」
「私も口が曲がりそうですv」
 こんなの相手にどうあるべきかもないだろう。そう片目を瞑って見せたピオニーに、一瞬見惚れたナタリアは、先程までの重苦しい気鬱が消えていることに気が付いた。そして、戯けた青い瞳に浮かぶ柔らかな気遣いの色にも。
 話に出てきた丁度その頃、ピオニーは幽閉されていたと聞く。そしてジェイドも、人の死を認識できないような子供であったと。懐かしげに語られる過去は、美しいばかりではないだろう。道を違えた友もいる。それでも、楽しかったと笑うのだ、この、ブウサギに友の名を与えて傍に置く皇帝陛下は。
 敵いませんわね。そう思いつつ、ナタリアは極上の笑みを浮かべた。


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【あとがき】
幼馴染みというものは、戯れあうことと見つけたり。

陛下がディストをサフィールと呼ぶのが、とても好きです。なので思う存分呼ばせてみました。
まあこの陛下は、話の展開上仕方ないとはいえ、サフィールサフィール言いすぎな気もしますが。ちゃんと(?)ジェイドもネフリーも同じくらい大好き、な、つもりで書いています。
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