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CAST:ガイ・ピオニー
ガイ様、花束お届けに参上! の巻

花の名前

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 ブウサギを連れて歩いていたところ、荷物をひとつ頼まれた。
 陛下への贈り物だというそれは、一抱えもある花束だった。

「陛下、花が届きましたよ」
「ああ御苦労、ガイラルディア。こちらに貰おうか」
 青く染まる白い室。其処の主は、書類の束を寝台の上に放り投げ。足元のブウサギをひと撫ですると、すらりと立ち上がった。何気ない所作に、立てば芍薬、なんて言葉が浮かぶのは……手元の花の所為だろう。
 片手では持て余すほど大きな花束を、伸ばされた腕に収まるように差し出せば。その拍子に、赤い花弁が、肩口に掛かる金の髪や喉元に触れた。その色の対比の……あまりの……、男相手にこういう表現を使うのは非常に難だが、艶めかしさに息を呑む。
 この人の髪は、ちょいと男にゃ勿体ないような、きらきらしい髪で。いやはや残念と冗談交じりに思ってはいたが。健康な、ほんのり輝いて見えるような金褐色の肌と生花の赤の取り合わせときたら、目に毒なほど匂やかだ。
 なにやらいけないものを見た気がして、思わず視線を逸らす。ブウサギのリードを外してやりながら、誤魔化すように言葉を紡ぐ。
「……陛下、そういう大輪の……華やかな花、似合いますね」
「まあ、俺と同じ名前の花だからな。馴染みもするだろ」
 添えられたカードに目を落としながら、ぞんざいに呟く。その無造作な様子に、なんとなく安堵する。
「あまり嬉しそうではありませんね。この花、お好きではないですか」
「花の姿形はともかく、名前がなあ。あんまり面白くないってか」
 百花の王と讃えられるような花を贈られる男、そしてその花の前で霞みもしない男は、そう宣う。鏡に映る己の姿を見るような感覚なのかと思うと、妙に可笑しい。
「では、どんな花がお好みで」
「そうだなあ。貰って嬉しいのは薔薇、かな」
「へえ、意外なような、そうでもないような?」
「サフィール、いやこの場合ディストだな。薔薇の二つ名を名乗っていたろ」
 またこの人は、可愛いことを。
 いや、本当は。可愛いというよりこれは、淋しさの発露。そう思うのは俺の傲慢だろうか。
 この人のこういう『お気に入り』はそれこそ枚挙に遑がない。たとえば、幼馴染みの名を冠したブウサギ。フリングス将軍……『アスラン』の瞳の色。ジェイドの愛用する香り。ネフリーさんの住まう土地。
 そうやって、大切なものの影をひとつひとつ重ねることで、抽象的になりがちな『国』や『世界』を我が身に引き寄せ、愛おしんでいるのだ。
 この人が強引に望むのならば、ジェイドもディストもネフリーさんも……自身そのものを傍に留め置くことだってできるだろうに。
 ……美しい青と白の籠の中で、只一羽、歌い続ける金の鳥。
 突然浮かんだイメージに、胸が潰れそうになる。
 誰より自由なようでいて、その実、誰より自由に憧れていて。
 多分、この人は聡明に過ぎたのだ。自由を求めたとき、どうしてそう思うのかという、自由を渇望する理由……その本質を見失わなかったのだろう。そしてその結果、とびきり不自由な道を選んだ。
 つまりは。普通の男が「あなたを守りたい」と思うところを、この人は「あなたが生きる、この国この世界を守りたい」と、そう思ったのだと。自分にはそれができると、気がついてしまったと。そういうことなんだろう。
 視野が広いというべきか、大雑把というべきか。
 ……いや、これは。王の器というのだ、きっと。
 ふと思う。陛下を嫌っていたというディスト。そのディストが薔薇の二つ名に拘ったのは、『ピオニー』の向こうを張りたかったからではないか、と。それはなかなか難儀な道だ。惹かれながらも反発し続けるという道は。何しろ陛下は、他が『死神』だのハナはハナでも『ハナ垂れ』だのというなか、奴がそう名乗るのだからと薔薇を喜ぶような人。抗う身としては、これ以上なく居た堪らないだろう。差しのべられた手を素直に取れば、また別の道も拓けるだろうに。
 俺……ホドの生き残りである俺も、今、ここにこうしていることに、屈託が全くないとは言えない。
 けれど、ここにこうしていると、あのジェイドが軍属で在り続ける、その理由が判る気もするのだ。
「ああ、大天人菊もいいな、『ガイラルディア』?」
 そう。この人に、こんな風に言われっちまうと。
 冠のように光を弾く髪、よく響く声、笑みを含んだ青い瞳に思考が鈍る。
 もともとこういう考え方をする人だ。特別な意味など無いと重々承知。
 それなのに、こう。どうしようもなく嬉しいと、そう感じてしまうのは。
 わしわしと頭を掻いて、こっそりと溜息をひとつ。
 さて、これは。一体、どう解釈すりゃいいんだろうな?


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【あとがき】
陛下がディストをサフィールと呼ぶのも好きですが、陛下がガイをガイラルディアと呼ぶのも好きです。
ガイは、気障な科白を口にするぶんには露ほども気にしないくせに、それが自分に向けられることには慣れていなくて、陛下の前では困惑してると可愛いと思います。

そういや、『ピオニー(ピアニィ)』が牡丹或いは芍薬だというのは知っていましたが(だからピオニー陛下の名前を聞いたとき最初女帝だと思ったのですが)、ガイラルディアの和名が大天人菊だというのは初めて知りました。念の為調べてみたものの、ガイラルディアはガイラルディアだと思っていたので、和名があったのかと目から鱗。アビスの皆さんのお名前は、華やかで素敵です。……そのなかでも陛下の華やかさは群を抜いていると……。
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