2024-111 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 prev 10
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
■ピオニー
----------
掛け値なしに、可愛い奴だと思う。
堆積した疲労にぐったりとソファへ身を沈めれば、俺の気分を察するように慎ましく傍らへと控え、手を伸ばせば躊躇いなく寄せられる頬。まるで、恭順を証しするように。
けれど俺は知っている。こいつはこれで結構、気が強い。
「なあ。お前は今、幸せか?」
肌触りを楽しみながらも、つい、そんな言葉が口を衝く。
こいつが示す親愛の情、それを疑うわけじゃない。こいつは……俺が望む限り、俺の傍にいてくれるだろう。しかし本来、権謀渦巻く宮殿など、こいつのあるべき場所ではない。青い空と緑の大地、自由の風こそこいつには似合うと思うのだ。
水簾の檻。俺の身勝手で此処に捕らえるというなら、いっそ。
「……結婚してくれないか」
そう呟いてみても、応えはない。
俺をひたと見上げる、その瞳が哀しいほど優しいばかり。
天を仰いで、口の端を歪める。
それが不可能であることくらい、判っている。ただ、そう、少し疲れているだけ。こいつは俺が無体を言っても、頭から否定したりはしない。それに甘えてみたかっただけ。
さて、馬鹿な話はこれで終い。
頭を少しばかり乱暴に撫でてやって立ち上がる。
俺を振り仰いで揺れる、長い耳。ああほんと、愛い奴。
「お前がブウサギでなけりゃあな」
----------
あなたへとどく20のことば:12 さみしかったのかもしれない
掛け値なしに、可愛い奴だと思う。
堆積した疲労にぐったりとソファへ身を沈めれば、俺の気分を察するように慎ましく傍らへと控え、手を伸ばせば躊躇いなく寄せられる頬。まるで、恭順を証しするように。
けれど俺は知っている。こいつはこれで結構、気が強い。
「なあ。お前は今、幸せか?」
肌触りを楽しみながらも、つい、そんな言葉が口を衝く。
こいつが示す親愛の情、それを疑うわけじゃない。こいつは……俺が望む限り、俺の傍にいてくれるだろう。しかし本来、権謀渦巻く宮殿など、こいつのあるべき場所ではない。青い空と緑の大地、自由の風こそこいつには似合うと思うのだ。
水簾の檻。俺の身勝手で此処に捕らえるというなら、いっそ。
「……結婚してくれないか」
そう呟いてみても、応えはない。
俺をひたと見上げる、その瞳が哀しいほど優しいばかり。
天を仰いで、口の端を歪める。
それが不可能であることくらい、判っている。ただ、そう、少し疲れているだけ。こいつは俺が無体を言っても、頭から否定したりはしない。それに甘えてみたかっただけ。
さて、馬鹿な話はこれで終い。
頭を少しばかり乱暴に撫でてやって立ち上がる。
俺を振り仰いで揺れる、長い耳。ああほんと、愛い奴。
「お前がブウサギでなけりゃあな」
----------
あなたへとどく20のことば:12 さみしかったのかもしれない
PR