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ジェイド・ピオニー

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「ジェイド」
 名を呼ばれ、顔を上げる。
 手招きに応じて歩み寄れば、ぎゅ、と力一杯抱き締められた。
 咄嗟に抗議しかけて、思い留まり、力を抜く。
 私の名を呼び、それきり閉ざされた口。何があったのか語ろうとしないが、我が主には、たまに、こういうことがある。
 彼にはそれこそ誰彼の別なく構い倒すような、おおらかとも傍迷惑とも言えるところもあるが、それでも相手が心底嫌がるようなことはしない。誰もが築く一定の垣根を無闇に踏み越えたりはしない(この『無闇に』というのが曲者で、勝算ありと判断すれば易々踏破してしまうことも屡々あるのだが)。だというのに、こう、それを越えて一方的に……堰が切れたように体温を欲しがることがある、のだ。
 そして平素の、軽妙な口数の多さとは裏腹に、このようなとき……感情が激しく揺さぶられているようなときほど、口を噤む。ひょっとしたら、本性はひどく無口な質なのかもしれない……そのようにさえ思う。

 耳朶を掠める金の髪。鼻先が重なる距離で、無言の慟哭を受けとめる。

 水臭い、私を相手に取り繕っても仕方ないだろうにと思うが、これは彼の矜持なのだろうか。或いは、弱さ。ひとつ声に出してしまえば、そこからすべてが崩れると、そのようなことを畏れているようにも見えるが……それが的を射ているのかどうかは判らない。つくづく、人の機微に疎い我が身が恨めしい。
 
 やがて彼はひとつ額をこつんと合わせて、ゆっくり私を解放した。
 結局、なにも吐き出さない。それを、ひどくもどかしいと思う。
 
 私は、あなたを……あなたが私にするように、抱き寄せたりはできない。
 あなたが負う荷を、肩代わりすることもできない。
 けれど、私は、あなたの傍で。あなたの悲哀を受けとめましょう。
 万感の思いを込めて額づき、衣の裾にくちづける。

「……なんだ、慰めてくれるのか」
 ええ、ええ、そうです。
 私があなたにして差し上げられることは、ほんの僅か。
 けれど、たとえ、世界を敵に回しても。私……私たちだけはあなたの味方。
 なにがあっても、なにがおころうとも、だいすきですよ。ただただそれだけの思いを込めて仰ぎ見れば、少しは浮上したのか、口の端に微笑が戻る。……良かった。

「ありがとな、俺の『可愛いほうの』ジェイド」

 耳を揺らして応える。
 どういたしまして、御主人様。

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あなたへとどく20のことば:20 だいすき、ただ、それだけ
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