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×陛下
※微妙に女性向けにつき、御注意

四季と花と歌の御題三題

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■春:ガイ

 もし櫻がなかったら、春は心穏やかだろうに。最近、屡々、そんな歌が頭をよぎる。
 いつ花が咲くだろうかとそわそわして、爛漫と咲き誇る姿にうっとりして、雨風に曝されればはらはらして、そして一斉に散る凄絶なさまには、これぞという醍醐味と行かないでくれという未練が綯い交ぜになって、胸が苦しいほど、どきどきする。なくなればいいなんて本気で思うわけでもないくせに、櫻なんてものが世の中になければ、こんなに心が乱れることもないのに、なんて嘯く、歌。
 俺はまあ、風流を嗜むってな柄でもないけれど。ここにきて、どうもそれが身につまされてしまって、困る……ってのとはちょっと違うが、むず痒いというか、身の置き所がない、というか、まんまそわそわでうっとりではらはらでどきどきなんだが、いやはや、まったく、いったい。
「どうしたもんだろうな?」
 呟きながら手近なブウサギを撫でる。
「応えは期待しない方が良いぞ?」
 揶揄いを含んだ声にがばっと振り返れば、其処には、案の定、諸悪の根元が。
 ……諸悪……ねえ。
 ついうっかり、けれど至極率直に、思い浮かんでしまった言葉に天を仰ぐ。
 本っ当、罪悪を櫻花に擦りつけてもいいのなら、どれほど楽なことだろう!
「ま、気持ちはよく判るがな」
 ああもう、そんな。花咲くような笑顔で。
 気持ちが判るだなんて、あなたにだけは、言われたくない。
「ということで、だ。話は俺が聞いてやろう」
 だから。あなたにだけは、言えないんですって。

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■夏:サフィール

 ヒュウゥ、という音が空を切り裂いて天に昇る。一拍おいて、腹の底に響く爆音。軍基地の奥に押し込められていてさえそれと判る花火に……見えるわけでもないのに、顔を上げる。
 これだけ音が近いとなると、お祭り好きのあの皇帝は、何処かで必ず見ているはずだ。
 花火といえば……昔、ケテルブルグで。夏の夜、ネビリム先生たちと一緒に見たことが、ある。
 引率する先生、先生の横に並んで、いかにも楽しげに歩くネフリー。ジェイドはすたすた先に行ってしまって、私は人混みに流されそうになって。泣きそうになる、そんなとき、くるりと振り返って手を差し伸べるのは、いつだってピオニーだった。そして自分は、毎回その手を撥ね除けた。望むのは、この手ではない、と。
 しかし、今になって思うのだ。涙を堪え、拳を握り、一歩前に足を運ぶことができたのは、差し伸べられた手に反発してのことだったと。反発するほど、その手を意識していたのだと。
 そして多分、ピオニーはそのことを知っていた。
 だからこそ、度重なる拒絶にも嫌な顔をせず、また、懲りることもなかったのだろう。
 砲撃によく似た、けれど不思議と華やいだ破砕音が、立て続けに爆ぜる。
 それに合わせて、瞼の裏に、火の花が咲いては消える。
 皆と……皇帝なんぞになってしまったピオニーと、肩を並べて空を見上げた夏は、もう遠い夢のなかのこと。なにもかもが、あまりにも変わってしまった。
 鉄格子に額を寄せる。ケテルブルグでの日々を思い起こさせる、その冷たさ。
 ……ああ、そうだ。なにもかも、ではない。この鉄格子は、半ば便宜上のもの。ここから出るのは……出る意志さえあれば、そう難しくはないのだ。
 切ないような甘さと苦さに唇が歪む。
 鷹揚に差し伸べられる手と、それを素直に取ることができない自分は……昔も今も変わらない、か。

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■秋:アスラン

「うわ。これは、壮観ですねえ」
「確かにな」
「営倉の近くに、こんな、コスモスの群生地があるなんて」
 エンゲーブへと続く、丘陵。そこを埋め尽くすように咲き揃ったコスモス。白、薄紅、赤紫……。無粋な軍人の目にも、鮮やかな色彩。大地を魔界に降下させたり、などと、天変地異にも等しいことがあったわりに、よくぞこれだけ咲いたものだ。
 吹き抜ける風を受けて、たおやかに揺れる花、花、花。そのさまは、あたかも毛足の長い絨毯をさらりと撫でたが如く。爽やかな秋の空気と相俟って、なんとも明媚な趣だ。
 それにしても。この風景を、昔、どこかで見たような。
 ふと浮かんだ既視感の正体を探れば、この景色のような歌を聴いたことがあるのだと思い至る。
 広い野原一面に咲く花、それを花束にしてどう、とか。
 花束……を、誰かに贈る歌だったか? だが、贈りたいと思う相手が花束など要らない人だったらどうするのだろうか。……そう、おそらく、あの方も、花束を欲しがったりなさらない。花を贈るより、花畑が魔界の泥に沈まぬよう尽力する……そのような意識の在り方こそ、あの方の御心に適う道だと思う。
 けれど、一輪だけなら。
 あの方の元に持ち帰ってもいいだろうか。何処其処に、軍靴に踏み荒らされることなく花が咲いていて、という話を結び添えれば、喜んでいただけるだろうか。それこそ花を束ねる、リボンの代わり……に……、
「……少将、どうしました? 顔、赤いですよ」
「いや! なんでもない!」
 血の巡りが早いのは、そう、不遜だという意識の所為に違いない。少なくともお仕え申し上げる主君を連想していい歌ではなかった。……心の底の疚しさなど、認めるわけにはいかない。
 すべて思い出した歌。そこに紡がれていたのは、ひとつ残らず捧げる花と引き替えに、ただひとひらの手紙をねだる、一途の恋。

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■冬:ジェイドとネフリー

 ねえ、兄さん。今、家の庭に冬薔薇が咲いているわ。
 覚えているかしら。昔……小さい頃、この花が咲いたとき、私が「綺麗ね?」って話しかけたら、兄さん、あからさまに困った顔をしたこと。私は「綺麗ね?」「そうだな」、とか、そんな何気ない会話のつもりだったし、兄さんがこんなことで困惑するなんて思っていなかったからびっくりして、どう思うのと、重ねて訊いて。そうしたら「白色。八重の花弁は16枚から20枚で直径は7cmほど。棘は殆どなく……」以下延々。どこの辞典かと思ったわ。
 今でも同じように答えるかしら。
 ううん、きっと違うわね。
 兄さんと私は相容れないところもある兄妹だけど、驚くほど似ているところもあるから。兄さんのところにも、今、薔薇が咲いていると思うのよ。昔はまっさらの雪原のようだった淋しい心に、白薔薇ではなくて、赤い薔薇が。
 でも。それは、訊ねないでおくわね。「薔薇ではなく、牡丹が」なんて答えられたら、好きで選んだ知事の仕事、ついうっかり投げ出したくなってしまうもの。
 兄さんには、幸せになって欲しいと思うわ。
 だけどなるべく、私に内緒で、こっそり、ね。

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『歌』はどの歌をモチーフにしたか、出典を明記した方がいいですか、ね? 本歌を知らなくても大丈夫なように書いたつもりですけれど。あ、本歌を全部あてた方にSSか絵をプレゼント、っとかなんとかいう企画を立てたら……いや、でもそれはそれで寂しいことになりそうですしねえ……。
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